視覚機能とは視力・眼球運動・両眼のチームワーク・調節機能などの入力機能と 脳の中で視覚情報を認知・記憶・イメージする処理機能の2つを総合した機能のことをいいます。 視力も入力機能の一つですが、視力がよくても他の機能に問題があれば視覚情報を効率よく入力 したり、適切に脳の中で処理をして行動に移すことができません。 視覚機能のどこかに問題がある場合、字を効率よく読んだり、書いたりすることや、漢字を覚えたり、 図形の問題を解くこと、イメージして考えることなどが苦手になってきます。 本だけではなく、パソコンなどが見づらくなることも視覚機能の問題から起ることがあります。 視覚機能は年齢とともに発達してくるものですが、その発達が上手くいかない場合もあります。 また成人になってから問題が生じる場合もあります。 しかし視覚機能トレーニングや機能を補助するための眼鏡をかけることで問題を改善することがで きます。 欧米などではオプトメトリスト(検眼士)の国家資格を持っている人がこのような問題を扱っているの ですが、日本にはこのような問題はほとんど見過ごされているのが現状です。 一部の眼科、眼鏡店でしか対応がなされていません。 ●米国での取り組み 米国ではジョンソン元大統領の娘さんが、40年ほど前、当時高校生で、視力や知能指数や学習態度 にも問題がなかったにもかかわらず、成績不振に陥っていました。娘さんは色んな検査を受けたので すが、原因が分からず、最後にオプトメトリストの検査を受けました。検査の結果、娘さんには視覚情 報を処理する能力に問題があることが分かり、オプトメトリストの指導の下、視覚機能トレーニングに 取り組みました。 成績は次第に上がり、大学に入ってからは優等生名簿に名を連ねるようになったのです。 このことは視覚機能の重要性が米国で認識されるきっかけとなりました。 1980年代には米国の金メダルを取ったオリンピックバレーボールチームが米国オプトメトリストによる 視覚機能トレーニングを受けていました。 現在でも大勢のプロ、アマチュアのスポーツ選手が視覚機能トレーニングを受けています。 子供たち、一般の人の視覚機能の問題をオプトメトリストが検査で発見して眼鏡による矯正を行った り、トレーニングを担当することも現在では当然のように行われています。 ●日本での取り組み 日本では平成6年に名古屋の特別視機能研究所の米国オプトメトリスト内藤貴雄先生がボクシング世界 チャンピョンの薬師寺保栄選手の視覚機能トレーニングを担当したことがニュースステーションで取り上 げられ、また子供の視覚機能の問題についての特集も同年ニュースステーションで組まれました。 このことが日本で視覚機能の問題が知られるきっかけとなりました。 平成14年に信州大学の教育学部の大学院で行われた研究では75人の小学生3年生のうち11人に 視覚機能の問題が見つかり、その11人全員の読書能力が低下していることが分かったのです。 日本の大学でも近年このような研究が行われるようになってきました。 現在、大阪医科大学のLDセンターでは米国オプトメトリー修士の奥村智人先生が専属指導員として 視覚機能検査・トレーニングを行われています。 私たちは平成18年度から視覚機能研究会を立ち上げ、米国のオプトメトリーカレッジで米国.国家資格を取得された北出勝也先生 を代表として、志のある日本の眼科・眼鏡店の実務家が視覚機能の問題に取り組んでいきます。 眼筋をコントロールして眼を動かす能力です。 この機能に問題があると眼を自由自在にスムーズにコントロールすることができないため、本を読ん でいるときに行をスムーズに追えなくなったりすることがあります。 行や字を飛ばして読んでしまいます。また黒板の字を写すときに黒板からノートを見たりすることも難 しくなるので、板書が難しくなります。 ボールを眼で追うことも難しいので、球技などのスポーツも苦手になります。 眼球運動は6歳くらいまでにほぼ完成します。 小学校に入ったときに眼球運動は十分に発達していないと文字を読み書きすることが難しくなるので す。読むときに頭を動かして読もうとする、指で行をなぞりながら読もうとすることで対応しようとしたり することもあります。 特に脳や眼に病気がないかぎり、眼球運動はトレーニングで発達させることができます。個人差はあ りますが毎日5-10分くらいのトレーニングで3ヶ月ほどでかなり良くなります。 成人してからでもトレーニングは可能です。
両眼のチームワークも眼球運動なのですが、両眼を寄せたり(輻輳)、離したり(開散)する運動です。 効率よく両眼を寄せたり、離したりすることで遠くから近くのものを交互に見ることが出来ます。 板書にも重要です。 正確に両眼を一点に向けられることで正確な遠近感も出てきます。 そのことが深視力にも影響を及ぼすのです。 元々両眼の向きのずれというものが大きすぎたり、 寄せる力や離す力が弱いと両眼のチームワークに問題が出てきます。眼が疲れやすくなったり、 物が二つに見えてしまうことがあるのです。 物が二つに見えるようになると日常生活を行うのも困難になってきます。 トレーニングで眼を寄せる力をつけたり、プリズムというものを眼鏡レンズに入れることによってこの 問題を改善することが可能です。 深視力を改善することが可能な場合もあります。 近くのものにピントを合わせてきれいに見るためには調節機能が働く必要があります。 遠視の人の場合は遠くを見る場合にも調節力が必要になります。 40歳を過ぎて、老眼になってくるのは調節機能が弱くなってくるからですが、若年者でも調節力が弱 っていれば近くのものにピントが合わせづらくなり、パソコンが見えにくくなったり、本の字がぼやけて 読みにくくなってくることがあります。 眼の中の水晶体というレンズが厚くなったり、薄くなったりすることで調節を入れたり、抜いたりという ことができるのですが、効率よく行うことが出来ない人もいます。 そうすると近くのものにピントが合うのが遅くなったりするのです。 調節機能の問題もトレーニングで改善することもできますし、眼鏡によって改善することができます。
部屋の照明を少し暗めにして、パソコンをいつも使用する距離で下の図を片目ずつ見てください。 緑の長方形と赤の長方形の中の2重丸はどちらが濃く見えますか?
眼の調節機能の簡単チェック
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